軽度認知障害(MCI)かもしれないと思ったら その5:アミロイドβ ペプチド
これまで私たちの院長日記で取り上げてきました
血液中の
アポリポタンパク質A1
トランスサイレチン
補体タンパク質C3
は神経細胞に障害のあるアミロイドβペプチドを脳内から排除し、その毒性を弱める働きがあります。
アミロイドβペプチドは
老年性アルツハイマー病の主要な病態因子として
治療薬を含め多くの研究がなされてきました。
アミロイドβペプチドは
アミロイド前駆体タンパク質から、プロテアーゼによって切断されて産生されますが
その中でアミロイドβペプチド42とアミロイドβペプチド40が
老年性アルツハイマー病の病態形成に大きく関わっているとされています。
アミロイドβペプチド42は
脳実質に蓄積し、老人斑を形成し
アミロイドβペプチド40は
主に脳血管壁に蓄積し脳アミロイド血管症を引き起こします。
これらのアミロイドβペプチドは神経毒性を持つので
脳内から末梢に排出されますが
アルツハイマー病ではその排出能が低下しています。
その結果、老年性アルツハイマー病では
脳内のアミロイドβペプチド42の過剰な蓄積が認められます。
その一方で、アミロイドβペプチドの排出量が低下するために
髄液や末梢血中では、その濃度が低下します。
老年性アルツハイマー病
軽度認知障害
認知機能健常高齢者
を比較すると
血中の
アミロイドβペプチド40は
老年性アルツハイマー病において有意に増加しており
アミロイドβペプチド42は
認知機能健常高齢者と比較して軽度認知障害や老年性アルツハイマー病で有意に低下します。
老年性アルツハイマー病などの認知症患者が増加した原因として
高血圧、糖尿病などの生活習慣病の増加があります。
最近の研究では
アミロイド前駆体タンパク質からアミロイドβペプチドが産生されること自体は
生理的な正常な反応であり
そのアミロイドβペプチドは老廃物として脳から排出されます。
老化に伴うその排出能低下によって
アミロイドβペプチドの脳内への蓄積と
それによる炎症が引き起こされ
これが老年性アルツハイマー病の病態ではないかと考えられています。