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院長日記

メラトニンは「睡眠ホルモン」ではない 〜最新研究が明らかにした「回復力」を支える分子〜

武本 重毅

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「メラトニン」と聞くと、多くの方は

「眠くなるホルモン」

というイメージを持たれるかもしれません。

確かにその役割も大切ですが、最近の研究では、それだけでは説明できないことが次々と分かってきました。

現在ではメラトニンは、

細胞が夜の間に自分自身を修復するための司令塔

のような存在として考えられるようになっています。


夜、私たちの体では何が起きているのでしょうか?

昼間、私たちの体は活動しています。

歩き、
考え、
仕事をし、
食事をし、
運動をします。

その間、細胞の中ではエネルギーが大量に使われ、

少しずつ傷も蓄積していきます。

だから夜になると、

体は

「活動モード」から「修復モード」

へ切り替わります。

この切り替えのスイッチを押しているのが、

メラトニンなのです。


メラトニンの本当の仕事

最新のReview論文を読むと、メラトニンには実にさまざまな働きがあることが分かります。

① 体内時計を整える

夜になるとメラトニンが分泌され、

「今は眠る時間ですよ」

という情報を全身へ伝えます。

これが自然な眠気につながります。


② ミトコンドリアを守る

細胞の中には、

エネルギーを作る

ミトコンドリア

があります。

しかしエネルギーを作る過程では、

活性酸素(ROS)

も発生します。

メラトニンは、

  • 活性酸素を減らす
  • ミトコンドリアの膜を守る
  • ATP(エネルギー)産生を支える
  • ミトコンドリアDNAを保護する

など、多方面からミトコンドリアを支えています。


③ 炎症を静める

年齢を重ねると、

体の中では弱い炎症が長く続きやすくなります。

これを

慢性炎症

と呼びます。

最近では、

この慢性炎症こそが老化を進める重要な要因の一つと考えられています。

メラトニンは、

炎症を引き起こすサイトカインや炎症シグナルを穏やかに調節し、

体を「修復しやすい状態」に整える働きがあります。


④ 傷んだ細胞を掃除する

私たちの細胞には、

古くなったタンパク質や傷んだミトコンドリアを取り除く

オートファジー

という仕組みがあります。

メラトニンは、

この掃除システムを適切に調節し、

細胞の中をきれいに保つことが報告されています。


⑤ 免疫のバランスを整える

メラトニンは

単純に免疫を強くするわけではありません。

必要な免疫は維持しながら、

過剰な炎症は抑える。

つまり

免疫のバランスを整える

働きを持っています。


年齢とともに減っていくメラトニン

実は、

メラトニンの分泌量は年齢とともに減少します。

子どもの頃が最も多く、

20代以降から徐々に低下し、

高齢になると大きく減少することが知られています。

その結果、

  • 睡眠の質が低下しやすくなる
  • 修復能力が落ちる
  • 慢性炎症が増える
  • ミトコンドリア機能が低下する

など、さまざまな変化につながる可能性があります。


だから睡眠は大切なのです

「睡眠不足は体に悪い」

ということは昔から知られていました。

しかし最近では、

睡眠そのものよりも、

睡眠中に行われる「修復」

が重要だという考え方に変わりつつあります。

メラトニンは、

その修復を開始する合図を送るホルモンなのです。


メラトニンはサプリメントだけではありません

メラトニンは本来、

私たちの体が毎日作っています。

その分泌を保つためには、

  • 朝に太陽の光を浴びる
  • 夜は強い照明やスマートフォンの光を避ける
  • 規則正しい睡眠を心がける
  • 昼夜のリズムを整える

といった生活習慣が非常に重要です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。