聖人は已病(いびょう)を治(ち)せ不(ず)して未病(みびょう)を治(ち)す。 黄帝内経(こうていだいけい)
賢い人は病気になってから治すのではなく、未病のうちに治す。
未病とは「未だ病になっていない」状態のことですが、発症していないのにどうやって治すというのでしょうか。それは病気をみだりに招かないバランスのとれた身体を保つことです。現代医療では病気と認定されないような状態でも、咳の音や痰の色、脈や舌などを診て、「脾臓が弱っている」とか「肝臓が疲れている」という見立てによって、本格的な病になる前に臓器の回復をはかっていこうとします。
(青島大明、病を治す哲学 伝説的医書『黄帝内経』の驚異)
私は大学浪人中にヘビースモーカーとなり、大学中はラグビーのきつい練習中吐きながらも喫煙を続け、大酒飲みだった。今考えれば、身体を痛めつけるだけ痛めつけていた20歳代だったと思う。ただ大学の講義中に習ったブリンクマン指数(現在では喫煙指数と呼ばれている)を覚えており、一日の本数×年数が400を超えたら発ガンなどの危険性が一気に高まるので禁煙しようと決めていた。実際には、アメリカでの生活に憧れていたので、35歳でその生活を始めるまでに何とか禁煙を実現することができた。
最近では喫煙する本人だけでなく、周りの受動喫煙でさえもタバコの煙に含まれる200種類もの有害物質、そして60種類もの発ガン物質の影響を受けることがわかり、国内での敷地内禁煙、施設内禁煙がすすめられている。喫煙係数も200を超えないようにと厚生労働省の指導も厳しくなった。電子タバコでの死亡例も報告され、喫煙そのものの有害性は明らかなのだから、私はクリニックを受診する喫煙者には必ず、しつこく禁煙の意味を説いている。これこそ未病のうちに治す確実な一手なのだから。