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院長日記

化粧品の安全性問題:食物アレルギー?

武本 重毅

 近年、肌に吸収しやすい成分を特徴とする美容のための化粧品が売られるようになりました。年齢を重ねても、いつまでも美しくありたいというのは、クレオパトラの時代から変わらない女性(最近では男性も)の願望です。

 そのような中、クリニックを受診している女性の一人から、「ブタ由来のプラセンタを顔に塗っていたら、痒みや発赤が出現するようになり、さらには豚肉を食べても同じような症状が出るようになった」という声を耳にしました。
 肌につける化粧品で食物アレルギーになることなんてことはあるのでしょうか…

 実はその有名な事例が10年ほど前におこっていました。
「(旧)茶のしずく石鹸」によるアレルギーです。医薬部外品である薬用石鹸として、2004年3月から2010年9月まで6年7ヶ月、466万人7000名に合計4650万8000個販売された人気商品でした。あわ立ちをよくする加水分解コムギ末(グルパール 19S)が含まれていました。それまでグルパール 19S以外の加水分解コムギ末でそのような大規模な有害事象の報告はありませんでした。この石鹸を使用したときに、顔面のジンマシン症状のない人が3割程度存在し、全身性のコムギアレルギーが突然前触れなく生じることも、原因が石鹸であることをわかりにくくしていたようです。
 石鹸使用部位とコムギ摂取後のアレルギー症状としては、70%は洗顔後に接触ジンマシン症状を発症し、コムギ摂取後に全身性即時型アレルギー症状を発症していました。28%は洗顔後に皮膚の症状は特になく、コムギ摂取後に全身症状だけを発症していました。2%は洗顔後に症状があるが、コムギ摂取では症状を認めませんでした。
(公衆衛生 vol77 No.10 2013年10月)

 10月28日の院長日記「ラテックスアレルギー」では、ゴム手袋を装着していることによりラテックスに対するアレルギー症状が出現し、さらにはバナナ、アボカド、クリ、キウイフルーツに対する食物アレルギーがラテックスアレルギーの半数におこることを書きました。
 このように食物アレルギーは経口感作だけでなく、経皮感作でもおこるということを覚えておいていただきたいと思います。日常、だれもが使用する化粧品の中にも注意が必要です。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。