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院長日記

老化は疾病-「老いなき世界(LIFE SPAN)」その8:老化との闘い

武本 重毅

老化を病気と認めれば老化との闘いには勝利できます

老化は身体の衰えをもたらします。

老化は生活の質を制限します。

老化は特定の病的異常を伴います。

これだけの特徴を全て備えているのだから

1個の病気と呼ぶための基準に残らず合致しているかに思えます。

ところが、1つだけ満たしていない条件があります。

影響受ける人の数が多すぎるのです。

「高齢者医療メルクマニュアル」によると

病気とは

人口の半数未満がこうむる不調のことをいいます。

しかし、当然ながら老化は誰にでも訪れるのです。

今の私たちは

一部の人にだけ関係する問題にわざわざ焦点を当てています。

しかし、あらゆる人を悩ませる問題に対処できるとしたらどうでしょうか。

しかも、それに取り組むことで

他の細々とした問題全てに大きな変化をもたらせるとしたら?

老化は1個の病気です。

その病気は治療可能であり

私たちが生きている間に治せるようになると信じています。

そうなれば、人間の健康に対する私たちの見方は根底から覆ることになります。

今、地球上で最も致死性が高く

最もコストのかかる病気が目の前にあるのに

それについて研究している者はわずかしかいません。

まるで、この惑星全体が思考停止状態に陥っているかのようです。

「だけど90を超えるまで生きたくなんかない」という気持ちが先に立つのなら

心配しなくてもいいのです。

望んでもいない長さまで無理に生きさせようというわけではないのです。

しかし、今現在のあなたがどんな気分でいようと

どれほど前向きな姿勢と健康的な生活習慣を維持していようと

あなたは既に1つの病気に冒されているのです。

そしてその病気は

何か手を打たない限り遅かれ早かれあなたを捕まえることになります。

これまでは旧来の見方を根本に据えて

致死性の疾患に対する様々な治療法が確立されてきました。

しかし、そもそもそんな枠組みになったのは

老化の原因がつきとめられていなかったからという理由が大きいのです。

治療の指針とするために、

老化典型的特徴を利用するのが悪いわけではありません。

その特徴に一つ一つ取り組んでいけば

多分私たちの暮らしにプラスの変化をもたらせるでしょう。

テロメアが短縮しにくくなる処置をすることで

長期にわたって健康状態と幸福感を高められるかもしれません。

タンパク質の恒常性を維持し

栄養状態の感知メカニズムが劣化するのを阻み

ミトコンドリアの機能不全を回避し

細胞の老化を食い止め

幹細胞を若返らせ

炎症を減らす

こうしたことにはいずれも、避けがたいものを遅らせる効果があるとみられています。

だがそれは

やはり9つの支流に9つのダムを築いているのと同じことです。

今や私たちはたった1個のダムを

水源に、築くことができます。

問題が起きたときにだけ介入するのではありません。

ただ進行を遅らせるだけでもありません。

老化に伴う様々な症状を一気に消し去るのです。

これは、治療できる病気なのです。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。