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院長日記

ヘムとポルフィリン 5:COVID-19物語その③ COVID-19とNMN

武本 重毅

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では

がんの死亡年齢と同じように

高齢者の死亡が多い

という特徴が明らかとなっています。

高齢者では、免疫力の低下、体力の低下、栄養不足、嚥下障害による肺炎増加など

加齢に伴ういくつもの現象や症状が既に見られており、

そこにCOVID-19が起これば、と納得する人も多いのかもしれません。

 

しかし、老化のメカニズムが明らかになってきた今

この現象を分子生物学的に解析して治療法を探ろうという研究が進行しています。

私はアンチエイジングが感染予防に重要という自論を展開して

以前の「院長日記」に連載でCOVID-19とNMN療法について書いています(2023年1月7日・13日・14日・15日・16日)。

高齢者の生命を脅かす新型コロナウイルス感染症

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:コロナ重症化因子と老化

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:呼吸器疾患

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:心血管疾患

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:腎臓障害

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:脳神経障害

コロナ感染症に対するNMN療法の可能性:糖尿病

ミトコンドリアの機能回復を考える その②:老化細胞による活性酸素種産生

 

COVID-19重症化の原因、その一つがNAD+(ニコチンアミド アデニン ジヌクレオチド)レベルの低下です。

NAD+は補酵素の一種です。

その働きは、ミトコンドリアでATPが産生される際に中心的な役割を果たします。

また、DNAの修復、免疫応答、細胞のシグナル伝達など、多くの細胞の働きにも関与しています。

ちなみに、酵素とは、生体内で起こる化学反応を促進するタンパク質のこと

補酵素とは、酵素が化学反応を進めるために必要な分子のことです。

しかし、NAD+の体内量は、加齢とともに減っていきます。

50代になると20代の半分程度になり、80代になると50代からさらに半減するとされています。右肩下がりに減少していくのです。

 

これを治療しようとするのが、「アンチエイジング3本の矢」のうちの一つ目

「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」の投与です。

NMNは、NAD+の前駆体であり、体内にNMNを取り入れることで、細胞内のNAD+レベルが増加します。

この増加により、ミトコンドリアの機能が向上し、エネルギー産生が促進すると考えられており、この効果については、多くの研究論文で報告されています。

また、DNAの修復、免疫応答、細胞のシグナル伝達といったことも、NAD+レベルの増加によって高まると考えられています。

マウスを使った研究でも、そのことが確認されています。

NAD+は加齢とともに体内量が減っていき、それによってマウスの老化が進んでいきますが、

NMNを補充することでNAD+の体内量が増え、さまざまな部位での老化現象が改善されていったのです。

 

では、NMNはどうすると摂取できるでしょうか。

NMNはブロッコリー、マッシュルーム、アボカド、キャベツ、枝豆、ステーキなどに含まれています。

しかし、NMNを100㎎摂取するだけでも、

ブロッコリーでは56株マッシュルームでは2500個アボカドでは126個キャベツでは42個枝豆では1万9000粒ステーキでは208枚が必要です。

ただ、たとえこれだけの量を摂ったとしても、

一つの細胞内に数百から数千個も存在するすべてのミトコンドリアの機能を改善させることは難しいのが事実です。

アンチエイジングを目的としたとき、NMN毎日300㎎の摂取が必要となるからです。

食事から摂取するだけでは、残念ながらアンチエイジング効果は得られないということです。

よって現在、NMNはサプリメントで摂取することが一般的になっています。

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。