Director's blog
院長日記

蟻田功先生を偲んで

武本 重毅

昨日の熊本日日新聞によれば

「世界保健機関(WHO)の世界天然痘根絶対策本部長として天然痘の撲滅に尽力した

医師の蟻田功(ありた・いさお)さんが

3月17日、老衰のため熊本市内の高齢者施設で死去したことが7日、分かった。

96歳。通夜と葬儀は近親者で済ませた。」

 

これまで院長日記に書いてきましたように

わたしが2005年に赴任した

国立病院機構熊本医療センターで

蟻田先生が1989年に

当時の細川護煕熊本県知事と一緒に立ち上げた

JICA(日本国際交流機構)の発展途上国向け研修を引き継ぎ

熊本の地に外国人研修生を集め

そこに一流の講師陣を招き、あるいは日本有数の施設を訪問して

約1ヵ月におよぶトレーニングを立案・遂行しておりました。

国際的に交流した25年を振り返って

サル痘の世界的流行:天然痘そしてエイズから私たちは何を学んだのか(前編)

サル痘の世界的流行:天然痘そしてエイズから私たちは何を学んだのか(後編)

 

今真っ先に思い出すのは

一緒に共著にしていただいた

雑誌「公衆衛生」に投稿した「天然痘テロは起こるか?」です。

天然痘テロは起こるか?  蟻田 功

新型コロナウイルスだけでない注意すべき感染症:その③ 天然痘

 

COVID-19のパンデミックがはじまり

ワクチン接種の重要性を再認識することになりました。

その一方で

ロシアのウクライナ侵攻がはじまり

今まさにロシアの研究所に保存されている

天然痘を使った生物兵器の可能性が浮上してきたのです。

 

そしてJICAの諸先輩方が皆さん口にしていたのが

蟻田先生が熊本ではじめた

ワクチンに関する研修は素晴らしかったということでした。

世界から熊本に集った人々が

蟻田先生の指導を受けて

自国での感染症対策に活躍していったのでした。

 

そして

同じ熊本大学出身で

エイズの治療薬を開発した

満屋裕明先生のことを気にかけておられました。

1992年にご自身で受賞された熊日賞を

満屋先生にも受けていただこうと

わたしと二人で熊本大学病院第二内科の教授室を訪問し

その後の授賞式に参加させていただいたのも良い思い出です。

 

 

 

Author:

武本 重毅

聚楽内科クリニックの院長、医学博士。