高齢者医療・介護においてオンライン診療の普及は進むのか
新型コロナウイルス感染禍が2年も続き、ワクチン接種だけに頼る状態の中、第6波による感染者増大によるところもあり、われわれは何とか集団免疫を獲得しつつあるのではないでしょうか。高齢者や幼小児のような弱者を除けば、以前の生活を取り戻しつつあるように思えます。
振り返れば、新型コロナウイルス感染パンデミックがおこったとき、わたしは高齢者施設などでの集団発生を防ぐにはどうすればよいかということを第一に考えました。
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そのために、従業員の感染予防、職場の消毒、施設内へのウイルス持込み阻止等を徹底してきました。結果、今のところクラスター発生の報告はないようです。
もうひとつ、非接触でウイルス感染のリスクなしに診療するために考えたのは、遠隔(オンライン)診療です。
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さらには、酸素飽和度などの身体データ(バイタルサイン)をリアルタイムで遠くからでも把握するためのバイタル測定機器の使用でした。BluetoothでスマートフォンやiPadにデータを送信できます。
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今であれば、隔離状態にある感染者の全身状態を見守る際に用いられていますが、当時は高齢者施設の夜勤帯において、少ない人数の当直者が高齢者の睡眠を妨げずにバイタルサインをチェックする方法として、夜勤者の負担を減らすことにもつながると考えていました。
しかしながら、まずオンライン診療自体が普及しませんでした。
総務省によれば、
(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd122320.html)
電話・オンライン診療の受診者について、2021年1月~3月の受診者数を年齢階層別にみると、電話・オンラインともに、40歳以下が全体の約4分の3を占める結果でした。年代が高くなればなるほど、対面での診療を希望しているものと推察される結果がみられました。
図表 年齢階層別の受診者数(令和3年1月~3月)
(出典)厚生労働省(2021)「第15回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会資料」
また、バイタル測定機器につきましては、コストの問題と測定精度や機器の不具合等の問題を経験し、結局は外来でわずか数名の方々で試験的に使用しているような状態が続いています。上記の電話・オンライン診療受診者の大部分を占める40歳以下の人々は、Apple watch等のウエアラブル機器を好む傾向があり、こちらはまだ測定精度に問題が残ります。そして今でこそ、医療機器としてのバイタル測定機器も価格が下がり、しかも使い勝手のよい製品が出てきましたが、未だにコストの問題や周辺機器の問題があり、少なくともわれわれの高齢者施設では導入に至っておりません。
新型コロナウイルス感染禍により、医療のデジタル化が進むと期待されていましたが、ヨーロッパで始まった戦争、そして予想される経済危機の到来と、まだまだ高齢者の生活環境における新しい医療資源の投入は難しい状況が続きそうです。